鳥籠の底は朱い道
この結果は自分が望んだ初めての願いへの一歩。
どうしても壊さないいけない障害であった。
それを見事に破壊した朱道はまさに今、自由なのだ。朱道自身を縛る力は己以外いない。
けど最後の黒馬の顔を、親父の顔を忘れない。そして最後に掠れた一言も忘れない。

『生き進め自由に』

その言葉の後に朱道は黒馬の魂を吸収した。
あぁ言われなくても生きてやるよ。もちろん自由にな。
そう考えるとこの先に何をしないといけないのか具体的に考える。
そう考えると案外忙しくやらないといけないことが多い。これが自由ってものだと朱道
が実感する。


――けど最初にやらないといけないのは一つ。
そうそれは……
「クロ!」
弾むような声で朱道はその名を叫ぶ。
するとやはりクロは召喚でもされたかのように現れる。
「ニャ」
「オレはもう自由だ。これで自由になったんだ」
朱道は喜びながらクロを抱きしめる。
こんな笑顔は恐らく初めて見せただろう。そして初めての笑顔を作らせたのは困った面持ちのクロだろう。
変わる筈のなかった朱道の歯車。それを見事に来る分けたクロという小さな存在。
 
よく出会うことが出来た。
よくクロは朱道を変えることが出来た。
よく朱道は自分の道を探すことが出来た。

――それが例え赤い赤い、それこそ運命に決められた朱い道であるかのように……。

――だけど朱道は自分の道を迷わず歩く。

力強く迷うことなく歩くだろう。それこそが決意なのだから。

「さぁこれからが大変だなクロ」
「ニャァ」
そうして朱道とクロは歩きだした。
生きる理由が出来た自分だけの自分の道に向かって……。
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