イチャ恋レシピ
僕がさつま芋の皮を剥き、キミはそれをざく切りにした後、マッシャーで潰していく。
「もう少し、蒸かす時間長くしておいた方が良かったかな?ちょっと硬いかも。」
とキミは言いながら、少し硬めのそれをムキになりながら潰し続ける。
バニラエッセンスの瓶の蓋を開けた僕は、それをキミの持つボールの脇に置いた。
そして、見計らった様にキミに寄り添い、ボールの中を覗き込む。
「わっ?!わああぁあぁっっ!!」
と叫び声を上げたキミは、予想通りに僕の側から飛び退いた。
キミの手から放れ空中を舞う、マッシャー。
カタンッ!と倒れた、バニラエッセンス。
「きゃああぁあぁっっ!!」
そうやって慌てふためいていたキミは、バニラエッセンスの瓶を立てた後、床に落ちたマッシャーを拾い上げた。
空気中を漂う、バニラの香り。
キミの頬に付いた、マッシュポテト。
キミの頬に手を伸ばした僕は、指先でマッシュポテトを拭い取ると、それを自分の口の中に入れて甘味を堪能する。
「えぇっ?!い、言ってくれれば自分で取ったのに!そ、それにっ…私の頬に付いたのを、く、…口に入れるだなんて。」
顔を真っ赤に染め上げたキミを見るのが久しぶり過ぎて、眺めていた僕までもが頬を熱くさせる。
喉仏のすぐ下にある何かが、僕をコショコショとくすぐっているかの様な感覚が歯痒くて…。
いちいち可愛い反応をして見せてくれるキミに、勢い余って文句を言ってしまいそうだ。
喉元まで出かかった言葉
『可愛いキミが、全部悪いんだっ。』
…を、飲み込んで、深呼吸を繰り返した。