たった一人の甘々王子さま


『嫌だ』と言って反発していても、最終的には決められた通りに事が進んでしまったと、悔しさもあるのだが。


婚約者だと紹介された『相楽浩司』という男を、何故だか嫌いじゃないと思う優樹。


自分がこんなにも悪態をついているのに、いつも優しい言葉をかけて笑顔で接してくれる。


本当に自分の事を選び、思っているのだろうか?
特に女の子らしい振る舞いをしていたわけでもないのに。


寝室のドアに凭れながらぐるぐる思いを馳せる。


「ねぇ優樹、お腹すいてない?」


ベッドサイドに立っていた浩司が優樹の傍に近づく。


「んあ? う、うん、なんか食べたい。」


考え事をしていてチョッと間抜けな返事をしてしまう。


「フッ、やっぱり優樹は可愛いね。」


頭をポンポンとして


『キッチンはこっちだよ。おいで?』
と、優樹の手を取り歩き出す。


大きくて暖かい男の手だ。
俊樹の手とは全然違う。


自分の手もエミのような可愛らしい女の子と比べると『大きくて彼氏みたいだね』とよく言われていた。


それなのに、浩司の手の中に納められると少し小さいし、細く感じる。
やっぱり女の手なのかな........と、思う。


今まで、そんなこと考えたこと無かったのに――――。
自分の中の女の部分が大きくなっていく感じだ。
おかしい、こんなの自分じゃないみたいだ。
この男に出逢って、何が変わったのだろうか――――


少し前を歩く浩司に捕まれた手を『キュッ』と握ってみる。
厚みがあって、自分よりゴツゴツしてるかも。


『これが男の手なのかな........』
もう一度『キュッ』とする。
『なんか、いいな。』
『ずっと触ってたいなぁ~』


「優樹は俺の手が好きになった?そんなに触っていたい?」


キッチンについたことも気づかずに浩司の手を握っていた優樹は質問されたことすらも気がつかず


「......うん。」


今までにない、女の子らしい返事をした。
その可愛らしい返事に、自分自身が驚いて


「は? え? 誰が? 何か言った?」


自分が発した言葉だと思わなかったのかキョロキョロと二人しか居ない部屋を見渡す。
それなのに、浩司と繋がっている手は離さない。


『短時間でこの変わりよう―――』
優樹は自分が思っているよりも早く心を開いてくれるかもしれない。
浩司の口許が緩む。


早く抱き締めたい。
心も身体も俺で埋め尽くしたい。
俺なしでは駄目になるほどに―――――

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