たった一人の甘々王子さま
4 結ばれた夜


優樹と浩司が一緒に暮らし初めてもう3週間が過ぎた。


初めはあんなに嫌がっていた優樹が浩司に優しく包まれて生活するようになり変わってきたのだ。


まず、言葉遣いに変化が出た。
まだ、自分の事を『わたし』とは言えないみたいだが。


次に、浩司が料理をしていると台所に立つようになった。元々が器用なのか浩司の指示でテキパキ動く。料理以外はそつなくこなす。


浩司にはそれが嬉しくてならない。
優樹のコトを可愛くて愛しく思う気持ちが増すばかりだ。
年齢も6つ違うのもあるかもしれない。


休日に出掛けることも増えた。
浩司の仕事が忙しくて毎週出かけることはできないのだが。
二人で買い物に出掛けて、お揃いで買ったものが少しずつ増えていく。


今も一緒にお昼ご飯の準備中だ。


今日のメニューはパスタ。
醤油ベースのソースにスパイスを効かせたものを玉ねぎ、ベーコン、ほうれん草とキノコを一緒に炒めて絡め、パスタと和える。


浩司が作るパスタで、優樹が一番好きな味付け。
パスタを茹でている間に炒め合わせる材料を適当な大きさに切っていく。


台所で二人ならんで作業する。
真剣な表情で玉ねぎを切る優樹の横顔を見て浩司の顔がにやけていく。


優樹がフライパンで下拵えした野菜たちを炒め、ソースを絡める。
浩司は茹で上がったパスタを湯切りする。


「もうね、香りからして美味しいよ。今日の出来もサイコーだね。」


優樹が笑顔で話す。


「そうかもね。二人で作るから尚更だ。」


浩司も微笑む。


今週は二人とも連休。
優樹のバスケの練習も骨休みの日だったのだ。
もうすぐ始まる大会に向けて始動する前のささやかな休日。


「ねぇ、優樹?」


湯切りしたパスタをフライパンに入れ、優樹とバトンタッチして食材を混ぜ始めた浩司が問いかける。


「ん? なに?」



使っていた道具を洗いながら返事をする。
もう、この返事の仕方からして優樹の変わりようが伺い知れる。
少し前まで『あ?なんだよ。』だったのだから。


「今週の3連休、遊びに行こうよ。」


パスタを皿に盛り付けながら提案する。


「......うん。......って、え?」


洗い物から視線を外さなかった優樹が返事をするものの、慌てる。


「そう、デート。ね、しようよ。いつもは買い出しがメインだからデートっぽいことしてないしね。」


ボン!―――――――


優樹の顔が茹でた蛸のように赤くなる。


「デっ......デート、デート煩いです!」

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