たった一人の甘々王子さま


「そう? 大好きな優樹とデートしたいって思う俺って、煩い?」


パスタを盛り付けた皿をダイニングに運びながら恥ずかしげもなく言う。


「――――――――!!」


まだまだ甘い言葉になれない優樹は対応に苦しむ。
そんなこと言われたことがないのだ。


幼馴染みのエミのように可愛く受け止められない。
損な性格だ............


「ねぇ、優樹?俺とのデート、行きたくない?」


浩司は洗い物をする優樹のすぐ隣にやって来て顔を覗き込んでくる。


「もし、行きたいところがあるなら教えて?お昼食べ終わったら出掛けようよ。」


もう、出掛けるのが前提で話が進んでいく。


『何処に行こうか。やっぱりドライブしながら―――――』


何やら予定を立て始めた浩司に聞こえるか聞こえない程小さな声で、


「――――――水族館。」


水道水を止めながら優樹がポツリと呟く。


「わかった。パスタ冷めちゃうから早く食べよう。ね、優樹?」


浩司は、頬を赤くして俯く優樹の頭を自分の左肩にのせてポンポンと優しく触れる。


浩司の頬もうっすら赤くなったのは言うまでもない。


無言の優樹を椅子に座らせ、向かいに腰かける。


「はい、いただきます。」


「いただきます......」


今日のパスタはいつもより美味しく感じる。
優樹と一緒に作ったのもあるだろうが、食事の後にデートの予定があるのも1つの理由かもしれない。

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