涙空*°。上
彼氏と彼女
―凜said―

んー...
よく寝たぁ...



目が覚めると同時に、
龍樹の香水の臭いと温もりを感じて、
思わずもう一度目を閉じたくなった。


でも、あたしは冷静だった。
こんなに良く寝たのは久しぶりだったからやたらと冴えていた。

今日、学校じゃねぇか。


『龍樹!!龍樹起きて!!今日学校だよ!!遅刻しちゃう...!!』

龍樹を思い切り揺らす。
やっと目を開いた龍樹は、
いつもの『どうしようもねぇ』って目であたしを見た。

ぉ、おお!?いい度胸しゃねぇか八神コノヤローッッ!!


『てめぇ今何時だと思ってんだよ。』
そう言って、龍樹はあたしの眼前にスマホを突き出した。


え...?
5時...ですか!?
あまりにも目覚めが良くて、全然わからなかった...

『す、すいま...わッッ!?』
龍樹はあたしの腕を思いっきり引っ張って、ぎゅーっと抱きしめた。

『ちょ、龍樹っ...け』
『お仕置き』
そう言って龍樹は、激しいキスをした。


こいつ...朝からなんてことしやがんだ!!
キチガイか!!

でも、朝からラブラブするなんて
早くもリア充を感じて幸せ...



まて、
待ってくれ。まとうか。
あたし達付き合ってんのか?
まずそこからじゃないか?


『龍樹...あたし達って付き合って...付き合ったんだよね?』
微笑を浮かべて龍樹に聞くと、


『本当馬鹿だな。病院行ってこい』
って暴言吐かれた。
ま、まぁ...付き合ってるって事実を確認できたからまぁいいか。


んー...これから大変だわ(苦笑)
間違いなく未遥と全校の女子からの、
ドぎつい拷問が待っているに相違ない。
いやぁ、恐ろしい!!


あたし達はそこから1時間寝たり起きたり繰り返して、余裕を持って八神宅を出た。

京香さんにお礼言いたかった、
って龍樹に言ったらメアドと電話番号をくれた。

『姉貴暇人だからたまに電話してやれ』
って龍樹は言ったけど、
彼氏持ちのパリコレとクラブのオーナー掛け持ちしてるド級の美人の、
どこが暇人なんだろうか。

お世話になりました
と、八神家にお礼を言った。
今度ゆっくり京香さんとお話したいなー...とも思った。





龍樹と教室に入るなり、
未遥がすごい勢いで飛んで来て、
そのままあたしを屋上に引っ張り出した。


さ、流石未遥...怪力だ!!


『凜!!あんた昨日大丈夫だったわけ!?』
未遥には、龍樹の家に泊めてもらうということだけをメールで報告した。
『あれ以来返信ないしさぁ...』
『心配させてごめん。それとあたし...』

あたしは未遥の顔をまっすぐ見つめた。
夏樹のことも、今までのあたしのことも、
全部知ってる未遥に、
龍樹を好きになって、付き合ったって言うのはなんだか言いづらい。
でも、支えてくれる親友だからこそ...


『あたし、龍樹と付き合うことにした!』
なんだかちょっと怖くて、
未遥の顔から視線を落とした。


『凜って気づくの遅いよね』
未遥の笑い声が聞こえて顔を上げるた。


遅い...?なにが!?


『凜が龍樹くんを好きなの、あたしが気付かないと思った?』
う...そうきたか...

『でも、あえて何も言わなかったのは、夏樹のことちゃんと整理してからにして欲しかったから。』
未遥は遠慮がちに、
あたしの顔色を伺っているみたいだった。


『凜が龍樹くんへの想いに気づいたら時はきっと、夏樹への想いは、思い出になってるとあたしは思ったからさ。』
未遥は微笑んだ。


未遥は、なんでもお見通し。
だこら未遥に隠し事をしようとすら思えなかったりする。
そして、
いつも答えをみつける道しるべやヒントをあたしにくれる。


『ありがとぉ〜未遥ぅ〜』
あたしは未遥に思い切り抱きついた。




確かに、
あたしの中で夏樹は思い出になりかけていた。







思い出に...








なるはずだった。





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