病愛。【完】
颯side




いつもより早く来てしまった。




きっとこの時間だったら誰もいないだろうなんて思いながら教室のドアを開けた。





しかし教室にはもう誰かがいた。





机に突っ伏しているため顔は見えないが、あの席は…






「伊藤…?」





それは確かに伊藤の席だった。




俺の隣の席だし…




確実にそうだろう。





伊藤が机に突っ伏す姿なんて…初めて見た。





こんな早い時間に来る伊藤を見るのも初めてだ。





昨日のことがあったからか…?






そんなことを心配しながら俺は席についた。






伊藤はぐっすり眠っているようだった。






俺はなるべく音をたてないようにそっと授業の準備をした。






「ん…」





伊藤が声を出す。




起こしてしまったかと焦ったが…





また寝息をたてたので起こしたわけではないようだった。






俺は伊藤を見つめた。





伊藤の次に来たのが俺でよかった。





こんな無防備な伊藤の寝顔なんて誰にも見せられないからな。





俺は食い入るように伊藤を見ていた。






すると…





「え…?」





伊藤の目から一筋の涙がこぼれおちた。








「私…どうしたらいいかわかんないんだよ…」






そう言う伊藤の涙が頭の中で何度もフラッシュバッグされて…




伊藤のねごとが何度も頭の中でリピートされた。
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