家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


「あの子が居なければ、あの子が居なければ、八尋はあたしのものなのに!!」


何だよ。


その、全部柚のせいみたいな言い方。


それで自分は悪くない?


俺に嫌われている現実を全部柚のせいにして目を逸らしてるだけだろ?


「…いい加減にしろ」


「…え?」


お姫様は柚への理不尽な悪口を一旦止めて俺を見上げる。


「俺の前で柚のこと悪く言うな」


何が優しい麒麟のお姫様だ。


麒麟の奴等もちゃんとコイツを見ろよ。


今目の前にいるお姫様は


「嫌、嫌、嫌なの!何であたしじゃ駄目なの!?なんでそんなにあの子がいいの!?」


ただの…我儘なお子様だ。


「……」


「何で黙るの?理由を言ってよ!」


理由?


そんなの一つしかない。


「…好きになったから」


それだけで理由は十分だろ?


「何なの…何で、何で…」


お姫様は崩れ落ち、冷たい廊下の床にぺたりと座り込む。


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