家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


「…あの子にあんなことまでしたのに、全部無駄じゃない」


ポツリとお姫様が呟いた言葉は小さくても俺の耳によく届いた。


あんなこと?


思い浮かぶことは以前の誘拐。


「何、あんたがあの主犯?」


お姫様と目線を合わすため、しゃがみ込む。


「…あ、あぁっ」


言ってしまったというように口に手をあて、目を見開く。


「…そうなんだ。あんたが、主犯」


つくづく女とは怖いと思う。


「なぁ、覚悟はちゃんと出来てるよな」


何をしようか。


「俺、女だからって手加減とか無理だから」


俺が偶然見かけたから良かったものの、柚は…。


想像するだけで怒りがふつふつと湧き上がる。


俺は怒りに任せて、拳をお姫様の顔面に向かって振り下ろした。


だが、


「俺の妹に手を出すのは止めろ」


知らない男に拳を止められ、お姫様には届かない。


「お兄ちゃんっ」


嬉しそうにお兄ちゃんと呼ぶお姫様。


家でも甘やかされて育ったのがよくわかる。


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