家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


「…み、なみ」


寝言で俺のことを呟く柚。


「…行ってくる」


柚の頭をくしゃりと撫でて、俺はあの場所へと向かった。


ある場所とは言わずもがなわかると思うが、お姫様が話があると呼び出した麒麟の倉庫。


俺は倉庫の前に着いたが、そこにはいつもいるはずの見張りがいなかった。


ゆっくりと倉庫の扉を開くと、サビた音が異様に響く。


懐かしい音。


倉庫内にはもう殆どが集まっていたようで、蒸し暑くなっていた。


俺が一歩ずつ歩いて行くたび、周りの奴等がザワザワと騒ぎ出す。


そこには俺がいた時のように挨拶をしてくれる奴なんていない。


ただただ、俺の様子を伺うように遠くから俺を見てくるだけ。


時間が経つに連れ、どこからか


「なんで…」


という声が次々と上がりはじめる。


騒がしくてうるさい…。


なんで、なんてこっちが聞きたいくらいだ。


“上”も“下”が騒がしいことに気づいたのか、階段を降りて踊り場へ出て来る。


そんな“上”の登場に“下”は口を噤んだ。


いつもより顔色が優れないな…。


…それも、そうか。


お姫様の裏を知ったんだから当たり前だ。


何も気にしない方がおかしい。


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