白い海を辿って。
「ありがとうございます。」
ただそう言うことしかできない私に、倫子さんは安心したように微笑んで華奢で綺麗なネックレスを渡してくれた。
大丈夫。
青井先生と出かけることは、男性と2人で出かけることは、怖いことなんかじゃない。
そう言い聞かせて、ネックレスをそっと手のひらに包み込んだ。
1度帰宅してから慌ただしく着替えて準備をする。
倫子さんが選んだ服を着て鏡の前に立つと自分じゃないみたいだった。
それでも首元で光るネックレスが、倫子さんが見守ってくれているようで安心する。
『お姉、もしかしてデート?』
髪をセットし直そうとしていると、ニヤニヤ顔の妹が覗き込む。
「違うよ。」
『なーんだ。お母さん違うってー。』
あぁ、母に聞いてこいと言われたのか。
もう興味をなくした妹の向こうで、母が心配そうに見ている。
思い出してしまうのは、私も母も同じなんだ。
「大丈夫だから。」
そう言って笑うと、行ってらっしゃいと見送ってくれた。