白い海を辿って。

「だからちゃんと話したい。先生に会って、ちゃんと今の気持ちを伝えたい。」


泣かないように、ぐっとこらえる。



「終わりにしてくる。本当に、終わりにする。」


彼との未来へ進むために。

私が先生とちゃんとお別れをすれば、彼はきっと、もうあんなことはしない。



『明日実。』


しばらくの沈黙の後で彼がぽつりとこぼす。

横顔が、とても苦しそうだった。



『俺、明日実に黙ってたことがあるんだ。』

「え?」

『理瀬さんは、もうあの教習所にはいない。』


え?と、もう1度声が出た。

先生がいない?



『うちの教習所は市外にもうひとつあって、理瀬さんの希望で今はそっちへ行ってる。』

「先生の希望…。」

『異動になる前に話したんだ。そのときに理瀬さんが言ってくれたことを、俺はずっと明日実に黙ってた。』

「どうして?」


先生は自ら遠い場所へ行った。

やっぱり先生も、もう私に会うつもりはなかったのだろうか。



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