白い海を辿って。

滝本さんにも軽く事情聴取が行われ、その間俺たちは車外で待機していた。



『私を先に送ってね。で、理瀬さんは滝本さん連れて理瀬さんの家に帰る。』

「え?」

『あんな状態で帰せないでしょ?今彼氏とは会えないんだし。』

「それがさ…」


岸井から聞いたことを椎野さんに話す。

2人はもう会っていて、だけど青井くんは滝本さんの手を放した。

事情が何も分からないだけに、車内では青井くんの名前は出さないでおこうと決める。



「お疲れ様。もう大丈夫だからね。」


警察が帰った後車へ戻ると、滝本さんはかなり疲れた様子だった。

無理もない。

短時間で、あまりにいろいろなことが起こりすぎている。



『改めまして、椎野結花です。理瀬さんの後輩です。女性がいた方が滝本さんが安心できるだろうからって、連れて来られました。』

「そうだったんですね。あの…本当にありがとうございました。」


後部座席から顔を覗かせた椎野さんが言う。

よくもまぁそんなにすらすらと嘘が言えるもんだと感心してしまう。



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