白い海を辿って。

『可愛いって、イジってるだろ。』

「イジってません。繋ぎましょう。」

『年上からかって楽しんでるな。』

「からかってません。」


手を取って歩き出すと、今度は理瀬さんが立ち止まった。

繋いだばかりの手が驚いた拍子に放れる。



「理瀬さん?」

『俺さ、もう大丈夫になった。』

「え?」


唐突な一言に、すぐに話が掴めない。

大丈夫になった…?



『離婚したばかりの頃に言ったよね。また同じことを繰り返してしまいそうで怖い、自信がないって。』

「はい。」

『でも、もう大丈夫な気がするんだ。滝本さんといると。』


私たちが会わなくなった理由。

理瀬さんは離婚して、自信を失くして、怖くなった。

私は元から、自分に自信がなかった。



『大切にしたいって会う度に思うし、会わなくても思える。それってずっと思ってるってことだから。』

「理瀬さん…。」


こんな日が来ることを、ずっと願っていたのかもしれない。



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