白い海を辿って。

“好きな人”とは既に付き合っているようだった。

いつからなんて、今更聞くつもりはない。

そうなっても仕方がないような生活しか、俺はさせてあげられなかったから。



『早く結婚がしたいだけだった。そう思ってたときに付き合ってたのが秀人で、たぶんそれだけだったんだと思う。』


あの日聞いた妻の声は、今もはっきりと思い出すことができる。

妻もまた俺と同じようなことを思っていた。

そんな2人の結婚生活が離婚という結末を迎えることは仕方のないことだったのかもしれない。

だけど、そう思った俺を妻の言葉が打ちのめした。



『私がなんで早く結婚したいって思ったか知ってる?子供が欲しかったからだよ。』


ほとんど諦めているようでいて、でも少し責めるような口調でまっすぐに言われた言葉が思い切り刺さった。

そんなこと想像もしていなかったから。

むしろ興味がないとすら思っていた。


やっぱり、俺が見ていなかっただけだったんだ。



< 80 / 372 >

この作品をシェア

pagetop