白い海を辿って。

謝ることも幸せになってねと言うこともできず、ただ事務的に話をして帰って来た俺は、正真正銘の独身になっていた。

やけに広く感じる自宅で、その静けさがひたすら俺を責める。


絶対に幸せにしなきゃいけないたった1人すら、俺は幸せにすることができなかった。


1人の男として、人間として、あまりにも情けない自分が嫌で嫌で仕方ない。

離婚すればすっきりすると思っていた自分も、違和感を覚え始めたときにやり直そうとしなかった自分も。


自分の最低さに気付かないまま、よく滝本さんを迎えに行こうなんて思えたな。

こんな形で結婚に失敗した俺を信頼できるはずがないのに。


今の俺に、滝本さんを迎えに行く資格なんてなかった。

でも伝えなきゃいけなくて、できれば会って話がしたかった。

滝本さんを傷付けて失望させてしまうだけだろうと分かっていながら、心のどこかで救いを求めていた。


ただ、会いたかった。


ありったけの優しさで接してくれた滝本さんに救われて、やっぱり好きだと実感して。

それでも、しばらく会ってはいけないと思った。



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