毒舌紳士に攻略されて
なのに坂井君は照れたり慌てたりすることなく、平然と言うのだから。

「さて、飯でも食いにいくか」

「え?」

「え、じゃねぇだろ?誘ってきたのはそっちじゃん」

なっ……!なに言ってるのよ!昨日は素っ気ないメールで『無理』と言って断ってきたというのに!

「ほら、さっさと行くぞ」

また可愛げなく文句を言いそうになったものの、手が繋がれた瞬間言えなくなってしまった。
顔を上げれば、「早く行くぞ」なんて言いながら嬉しそうに笑っちゃっているし。

「……うん」

おかげで素直に頷いてしまった。
そうしたら、ほら。
また坂井君は嬉しそうに笑ったものだから、胸をギュッと締め付けられる。


明日、琴美に聞かれても誤魔化せそうにないや。

琴美の言う通りかもしれない。
私はもう既に、坂井君に落ちているのかもしれない――。
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