毒舌紳士に攻略されて
同じことを主張する私に、琴美は手にしていた箸を置くと大きな溜息を漏らした。

「めぐみってばなんなの?坂井のこと苦手って言ってみたり、おかしいって言ってみたり」

「だっ、だって本当におかしいんだもん!」

心底呆れたように話す琴美に、必死に訴える。

本当におかしいのだ。
あの日……一緒に同期会の開催場所を決めに行ったあの日から!

「なにがおかしいのよ」

「それは――……」

食べることに集中しつつある琴美を前に、あの日以降の出来事を思い出しながら話していった。


*  *  *


「おはよう」

「……おはよう」

開催場所を決めに行った次の日の朝。
いつものように母親に「いってきます」と挨拶をし玄関のドアを開けると、そこには見慣れた……いや、正確には数時間前に乗せてもらっていた車と、見慣れた人物の姿があった。

「意外と朝出るの早いんだな」

車に寄りかかる姿もまた絵になるな。なんて呑気に考えていたものの、慌てて頭を切り替える。

「えっ!?どっ、どうして坂井君がここにいるの!?」

「おはよう」と言われ、咄嗟に「おはよう」と返してしまったものの、あり得ないでしょ。これ!!
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