毒舌紳士に攻略されて
「でも今は違う。ちゃんと目を見て話してくれるし、変に自分を隠していない。それ、すっげ嬉しいわ」

「……っ!」

表情を崩し、まるで子供のように笑う坂井君に完全にやられてしまった。
ううん、違う。
私のこと探しにきてくれた時には、すでにやられてしまっていたのかもしれない。

「さて、帰るか。俺飲んでないから送ってくよ」

「……ありがとう」

坂井君の顔が見れない。
だって完全に落ちてしまったから――。

毒舌で変に紳士的。
仕事ができておまけにイケメン。そんな彼が苦手で仕方なかった。
なのにいきなり「彼氏にどう?」とか「嫁になってくれない?」とか、いきなり言い出すし、実家には連れていかれちゃうし。

駐車場に向かう間、ずっと握られたままの手。
その手から気持ちが伝わらないか心配で仕方なかった。だって気付いちゃったから。

ありえないことばかりだったのに、なぜか惹かれてしまっていた。
そして今日、彼の魅力に完全に落ちてしまったんだ。

私……坂井君のこと、好きだ。
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