毒舌紳士に攻略されて
「それは元気があんなことをしたから?」

冷静に聞いてくるお父さんに、緊張が増す。
もちろんそれもある。でも、単純に考えるとどうしても分からないことがあるのだ。

「そうかもしれません。……それにどう考えても分からないんです」

「なにが?」

一息入れることなく聞いてくるお父さんに、疑問を投げ掛けた。

「私達、入社を機に出会いました。まだ出会って一年も経っていませんし、正直同期と言っても坂井君とは殆んど会話をしていませんでした。なのに突然その……好きって言われても信じられなくて」

第一印象からずっと苦手だった。だからずっと避けていたし、月一で同期会があっても話すことはなかった。
たまたま幹事を一緒にやることになってしまい、そこからだ。
坂井君とまともに話すようになっていったのは――……。

それは坂井君も同じでしょ?
なのにいきなり「彼氏にどう?」とか「嫁になってくれない?」とか。
実家には連れていかれるし、助けてくれるし。
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