毒舌紳士に攻略されて
「嘘、だろ?」

驚きのあまり、緊張感漂う入社式中につい言葉を漏らしてしまった。
だけどそれもそのはず。
ずっと会いたくて、一日たりとも忘れたことない彼女が隣に座っているのだから――。

あれから数年経ってはいたが、彼女を見間違えるはずなどない。
間違いなくあの時の彼女だ。

運命の再会にひとりテンションが上がるものの、皮肉なことに彼女は俺のことなんて全く覚えていないようだった。
挙句の果てにどうやら嫌われているようだし。

それでも諦めようって気持ちにはならなかった。
もう運命としか言いようがないだろ?
ずっと会いたかった彼女と同じ会社に入社するとか、運命という言葉以外、見つからない。

だから絶対にどんな手を使ってでも、彼女を手に入れたいと思った。
そしていつか、あの日のことを打ち明けよう。
すっかりと色褪せてしまったハンカチを見せながら――……。


*  *  *

「なのに、なにやっているんだか……」

ずっと好きで仕方なかった。そんな佐藤とやっとまた会えたというのに……。
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