毒舌紳士に攻略されて
きっと私の心情など知っているに違いない。
そのうえで今みたいに脅しかけてきたんだ、きっと。
なんて恐ろしい人だろうか。だから苦手なんだ、坂井君なんか!

心の中で散々悪態をついておきながら、決して口には出せないのが私だ。

「さっさと降りろ」と毒舌で言われながらも、ドアを開けてくれた坂井君に「ありがとう」と返すだけしか出来ない。
とことん自分の不甲斐なさに大きな溜息が漏れてしまう中、目の前にはレンガ造りで洋風的な二階建ての一軒家。
緑と花が沢山あって、自然を感じられる庭が目に写ると、坂井君はスタスタと家に入るべく数段の階段を上がって行く。

「あー!!ちょっ、ちょっと待って!!」

その姿を視界に捉え急いで後を追い掛け、咄嗟に坂井君の腕を掴んでしまった。
すると案の定、不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「なんだよ、時間過ぎているんだから行くぞ」

「いやいや!ちょっと待って!」

ドアを開けようとする坂井君の動きを必死に食い止める。
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