運命の出会い
突然目の前に薔薇の花束があらわれた。
「何?」
横から顔を出す男性がいた。
「お嬢さん、座ってもいいかな?」
花束を受け取りうなずく。
「俺ヒリト、ロックバントのボーカルをしています」
知ってる。でも、TVで見るより表情が穏やかだ。
「私は花咲みどりと申します」
またナンパかな?
「どうして私に花束を?」
「可愛い子がいたから買ってきた。ちょっとギザだったかな?」
「少しね」
「所でこんな所でどうしたの?」
ここまで来た経緯をヒリトに話す。
「グロバリーの井上さとしか…それより俺とドライブに行かない?」
「えっ…でも」
「井上の事が気になる?」
「わからない」
二人とも今日会ったばかりなのに積極的だな〜
「とりあえず、俺と出掛けよ。井上の仕事が終わる頃には戻ってくるからさ」
「ん〜わかった。行きましょ」
カフェを出て地下に降りる。
ヒリトは黒のスカイラインの鍵を開け、助手席のドアを開ける。
私はそれに従い助手席に滑り込む。
車はゆっくりTV局を出た。
「今から何処に行くんですか?」
「海でも見に行こうかと思ってね」
「へぇ〜」
ヒリトとのドライブは楽しい。色んな話をしてくれ、知識がある。
駐車場に車を止め、浜辺に出た。
薄着をしていたので少し寒い。
それを察してか、ヒリトは自分のコートを脱ぎそっと私の肩に掛ける。
「ありがとう、ヒリトさんは寒くない?」
「俺は大丈夫だよ」
コートの下はラメ入りのジャケットにヴィンテージのジーンズ。とても似合っている。
ベンチがあり二人並んで座る。
「みどりさんは今いくつ?」
「27歳です」
「俺は35歳」
「もっと若く見える」
「そう?ありがとう」
海を見つめ、冬の海も悪くないなと感じる。
「みどりさんにこれ渡しておくよ」
一枚の名刺を受けとる。
「裏に俺のプライベートアドレスが書いてあるから」
表を見ると代表取締役 ヒリトと書いてある。
「ヒリトさんって社長さんなんですか?」
「あぁ、表だって公表してないけどね」
「すごい、尊敬します」
「尊敬より1人の男として見てもらいたいな」
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