彼と私と秘密の欠片
「……でも、だから知りたいの。好きな人のこと、知りたいって思うのは間違えてる?」
私はじっと誠司さんを見た。
誠司さんは、私と目が合うと、すぐに視線を下に逸らした。
それだけで、すごく悲しくなった。
「無理なら無理で……ちゃんと突き放してよ。誠司さんが、優しいから、だから諦められないんだよ」
初めて誠司さん告白して振られて。諦められなくて送ったメールにもちゃんと返事をしてくれて、今まで通りに会ってくれて。
だから、もしかしたらチャンスがあるんじゃないかって期待した。
二度目の時もそうだった。
本当にウザかったらいくらでも無視することができたはずなのに。
でもそれは、ただの優しさだけだったの?
……やばい。涙が出てきそう。
でも、泣いちゃだめ。それが一番鬱陶しいんだから。
私は誠司さんに見られないように、下を向いて顔を隠した。
「……雛ちゃん」
静かに、誠司さんが私の名前を呼んだ。
でも、私は顔を上げることができなかった。
「俺、雛ちゃんの気持ちまで考えられてなかったね。中途半端なことばっかりして……本当にごめん」
こんな場面で謝らないで欲しい。
これだと、いよいよ本当に振られるみたいだ。
「確かに、本当のこと、ちゃんと言わないで断ってたのは、雛ちゃんに対して失礼だったよ。――雛ちゃん」
真剣な声で呼びかけられて、私は反射的に顔を上げた。
そこには、声以上に真剣な顔をした誠司さんがいた。
「ちゃんと話すよ。俺が雛ちゃんと付き合えない理由」
自分からけしかけておいてなんだけど、こんな展開になるなんて、本当に予想もしてなかった。