彼と私と秘密の欠片

「うん。おいしいね」

ミートスパゲティーを食べて、誠司さんは言った。


「でしょ? ここのパスタ、すごいおいしいの。パスタ自体にもこだわってるらしいんだけど、ソースとか、クリームもそれに合わせて作ってるんだって。毎年季節限定メニューが出るんだよ。もうすぐしたら、枝豆のクリームスパゲティーっていうのが出るんだって」


「へえ。それもおいしそうだね。雛ちゃんて、こういう美味しい店探すの上手いよね。いつも教えてくれるところもすごく美味しいし。やっぱり料理の勉強してたら気になるの?」


「うん。気になるっていうか……やっぱりどういう料理があるんだろうって思って探してると食べたくなっちゃうんだよね。色んなお店で食べ比べとかしたら楽しいし、勉強にもなるしね」


「いいね。楽しみながら勉強してるみたいで」

「うん」


すごく楽しい。

こういう食に関する話をしてるとつい熱が入っちゃうけど、それをニコニコと相槌を打ちながら、ちゃんと聞いて会話してくれる誠司さん。

きっと、美容師っていう職業柄そういうことが上手いんだろうけど、誠司さんは特別。

好きな人とこうして過ごせる時間が、何よりも楽しい。


「そういえば……」

誠司さんがお店の中を見回した。


「ここ、子供連れが多いね」

誠司さんが見ている先には、幼稚園以下ぐらいの子供をつれたママさん同士がランチをしているテーブルがあった。

誠司さんの言うとおり、そこの他にも、子連れでランチしてるテーブルがいくつかある。


「そういえば、キッズメニューとかあったよね」

そう言いながら、誠司さんはそのメニューの冊子を手に取る。


「うん。ここ、結構安いし、子供向けのメニューも多いから、休みの日とか家族連れの人多いよ」


「へー……いいな、ここ。慶太が好きそうなのばっかりだ。今度連れてきてやろうかな」

誠司さんは、優しいパパの目をしながら言った。


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