イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「いや、カイロですから」

「……なんか言うこと聞かない犬を散歩させてる気分になってきた」

 瑠海が苦笑する。

「誰が犬ですか?誰が?」

「ほら、桃華行くよ」

 むむむ、無視したな。

 しかも、本当に犬扱いじゃないですか!

 また膨れっ面になると、クスクスと瑠海が笑い出した。

「うちのモカは素直ないい子だったんだけどな。ホント、躾甲斐があるよ」

 瑠海の言葉にまたゾクゾクと悪寒がする。

 やっぱりなんかおかしい。

 風邪でも引いたかな?

「さあ着いた」

 瑠海が小料理屋の前で立ち止まり、扉に手をかけガラガラっと開ける。
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