イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「急な帰国だね」
 
 苦笑しながら兄に近づく。

「何か飲んでいくか?」

「特に喉は渇いていないから」

「じゃあ、行こうか」

 兄が席を立って会計を済ませ、店を出て並んで銀座の街を歩く。

「食事の前にちょっと立ち寄るところがある」

 そう言って兄と一緒に入ったのはイギリスの高級ブランド店。

 兄が店員に耳打ちすると、すぐに目の前にメンズとレディース物のコートが並べられた。

「何これ?」

「見ればわかるだろ?コートだ」

 兄は相変わらず冷ややかだ。

 お兄ちゃん、私だってそんな事はわかります。

「いや、そう言う意味じゃなくて、何でレディース物もあるの?」

「ついでだから、お前も試着しなさい」
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