イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「待って!私、お兄ちゃんみたいに高給取りじゃないんだよ」

 職業柄、値札を見なくてもコートの値段がいくらかはわかる。

 しかも、これカシミアのロングコートじゃない。

 カシミア100%なら50万前後はする。

「お前、今年もあの安物のダウンコート着て今の会社出勤するのか?一体何年着てる?一着ぐらいカシミア持っとけよ。冠婚葬祭も便利だぞ」

「お兄ちゃんはそれでいいと思うけど、私はあのダウンで十分だよ。暖かいし。カシミア買うにしても、こんな高いのはいいよ」

「だから、俺のついでだ」

「は?」

 私は兄の言葉の意味がわからなかった。

 きっと、兄からしたら相当間抜けな顔をしていたに違いない。

「遅れたがお前への誕生日プレゼントだ。と言っても、お前から貰ってる家賃で買うわけだが」
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