イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「いいよ、気持ちだけで。妹には高すぎるプレゼントだよ。じゃあさ、マフラーにしよ。その方が現実味あって良いから」

「マフラーも欲しいなら一緒に買ってやる」

「いや、お兄ちゃんそうじゃなくてね」

「桃華、いいから試着」

……ダメだ。

 兄が私を名前で呼ぶ時は、もう逆らえない。

 目がブリザードになって、有無を言わせないのだ。

 両親が海外にいる事もあり、兄は日本にいる間ずっと親代わりだった。

 ある意味両親より厄介な存在。

 両親は放任主義だけど、兄は何かと私の事を気にする。

 口には出さないが、兄はサンタの一件を今でも悔やんでいるのだ。

 私が二十七なのに恋人も作らずこんな枯れ女になったのは自分の責任だと思っている。

 だから、『お前を嫁に出すまで俺は結婚しない』と帰国の度に言われ、家族についての講義が始まる。

 今日もきっとそれは変わらないだろう。
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