イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 深紅のシャーリーを持ってキャリアウーマンになりたいのか、桃華は?

 嬉しそうな彼女を見て、ちょっと意地悪したくなった。

 聞くなら今だ。

 絶好のタイミングだろう?

「それも桃華のお兄さんに買ってもらったの?」

「……兄?」

 俺の言葉に桃華は瞬時に固まり、顔から笑顔が消え青ざめる。

その様子を面白そうに眺め、ニコニコ顔で告げた。

「いるんでしょ?外交官のお兄さん。名前は相澤修」

目を丸くし、ギョッとした顔をする彼女。

「な、何で兄の事知ってるんですか?」

 やっぱり兄か。

「新しいフランス大使の知らせが届いてね。添付されていた写真に桃華のお兄さんが写ってた」

「……すみません。お店で会ったのは兄です。フランス赴任前に帰国してて。でも、シャーリーは私のお金で買いました。でなきゃ、シャーリーに失礼ですから」
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