イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 最初は伏し目がちにしていた桃華が、急に顔を上げて俺の目を見た。

 OLの給料で簡単に買えるほどシャーリーは安くない。

 きっとお金を貯めて買ったのだろう。

「今日はシャーリーで通勤したの?」

「もちろんです。くたくたになるまで使うつもりですから」

 桃華の顔に笑顔が戻る。

「亡くなったシャーリーが聞いたら喜ぶと思うよ。参考に聞くけど、シャーリーバッグに何入れてきたの?」

「え?お弁当と財布と折り畳み傘とハンカチとポーチと……雑誌ですが、それが何か?」

 お弁当?

 予想外の解答。

 思わず笑みがこぼれた。

 シャーリー、いたよここに。

 シャーリーのポリシーを実践してる子。
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