最低王子と恋の渦
車道を忙しく車が走っていくのをぼんやりと目で追いながら私達は帰路を歩く。
飲食店の前を通り過ぎると、食欲をそそる匂いがふわりとした。
なんだかこうして三鷹くんと二人で歩いてるのは不思議な感覚だ。
遠い存在とまでは言わないけど、いつも隣同士で貶されては反抗しの変なやり取りをしている三鷹くんは完璧少年で。
口は悪いけど相当モテている彼がこんな私と一緒に映画を観て一緒に帰ってるなんて…。
私の人生で一番〝異様〟な関係である。
「…ねぇ、三鷹くんって女慣れしてるとこあるよね」
「は?」
「たまにいろんなことに気遣えるし……ほら、春くらいに私達が日直だった時とかさ」
私が一人で持って行くと言い張ったのに、それでも私を追いかけてノートを持ってってくれた。
私が水被っちゃった時とかも…。
「紳士的だろ。でも女慣れって言わないでくれるかな。まるで俺が女たらしみたいな」
「あはは、ごめんごめん」
「それに俺はたまにじゃなくていつも気遣ってるよ」
「…どこがですか? 毎日のように貶されてる人がここにいるんですけど」
「え? あぁ、胸がなさすぎて今の今まで壁かと思ってたよ」
「殺す死ね」
「冗談だよ」
クスッと笑う三鷹くんを私はうむむと睨む。
…いまいち三鷹くんは掴めないけど、このぐらいの距離感のがいいのかもしれない。
三鷹くんと上手く接せる距離感はこれくらいな気がする。
そう思えば私はかなり得な位置にいるのかも。
…それにしても一部の女子から詰め寄られたりしてるなんて、私だけデメリット大きいな。