最低王子と恋の渦



店員に案内されたテーブルに二人で向かい合わせに座る。


そのテーブルは以前田中さんが和久井の兄にナンパされていたあのテーブルで。

また思い出してイラッとした。





「飲み物何がいい?」





とりあえずドリンクバーを頼んだ俺は、藤本さんに聞きながら席を立つ。





「あ…ウーロン茶お願い出来るかな?」



「お茶?確か藤本さんオレンジジュース好きじゃなかったっけ」



「…覚えててくれたんだ。んー、でも今ちょっとダイエット中で」



「そんな細いくせにダイエットしてるの?骨にでもなるつもり?」



「…ふふ、じゃあオレンジジュースお願いしようかな」





懐かしいあの優しい笑顔を向けてくる藤本さん。

俺は「了解」と返事をしてドリンクバーへ向かった。



藤本さんの、優しくて包容力のあるところが好きだったのを微かに思い出す。

今じゃもう分からないけど。


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