最低王子と恋の渦
そのまま体が後ろによろけたかと思えば、私の背中はどこかに着地する。
ビックリして振り返ってみると、
「田中さんをどこに連れて行く気?」
そこには不敵な笑みを浮かべて彼女達を見ている三鷹くんがいた。
…て、三鷹くん!?
「えっ、王子!?」
「なんで…っ」
「また田中さん脅そうとしてる?どこまで低脳なの?」
こちらもなんとも言えぬ威圧感を放っており、彼女達はそんな三鷹くんにうっとたじろいでいる。
…私はいまいち状況を理解出来ず、ただ三鷹くんの懐で固まっていた。
……た、助かった…んだよね?
「申し訳ないけどそんな糞用事に田中さん貸せないよ」
「…で、でもっ」
「今日は田中さんと二人っきりにさせて欲しいんだけど」
「……し、失礼しましたぁ!」
彼女達はそう言うと、逃げるように廊下を走って行ってしまった。
恐らく三鷹くんの威圧感に負けたのだろう。
残された私達はしばらく彼女達を見送って、
…私は自分の心臓の騒がしさに戸惑っていた。
おまけに頭も大混乱である。
……私と二人っきりにさせてって…何……?
恐る恐る三鷹くんを見上げると、彼はハッとして私から一歩離れた。
「…田中さん」
「……は、はい」
「一緒に帰ろう」
ふと三鷹くんの左手に目をやると、私と三鷹くんの鞄が既に持たれていた。
そして三鷹くんは私を連れてそのまま教室を後にする。