変のみ成らぬ愛の糧。
僕は一人、寝室のベッドに座る。
鉄臭い味がのこる口内が、
自分のした行為を物語る。
最愛の相手は帰っていった。
怯え、涙を流し、僕を罵倒しながら。
ただ僕は、愛しんだだけなのだ。
苦しめたいのでは、決してない。

全て終わった後の苦い感情を潰すよう
奥歯をぐっと噛み締める。
理性を保っていればどうなったのか。
君は今も僕の隣で眠っていたのか。
僕を軽蔑した目で見ることも、
怯えることもなかったのだろう。

人の体温は心地よい。
汗ばんだ身体でさえ、熱を感じれば
気分を高揚させるのだ。
煩わしさなんて、愛しさの前に皆無。
怯えて低くなった体温は、
僕に底知れぬ寂しさを感じさせた。
丁度よくなんか、少しもないのだ。


僕は本能に忠実に生きている。

僕は本能に忠実に従えば、
生きられない世の中で生きている。
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