シンデレラは硝子の靴を
―佐伯邸。





「これはこれは、諒様。珍しいですね、諒様からいらっしゃるなんて…」




敷地の中に急停止したフェラーリを見つけて、着物姿の男が慌てて出てくる。



諒はそれに対し、小さく会釈し、



「肇(はじめ)さん、いますか。」




短く問う。





「生憎旦那様は現在来客中でして―」



「じゃ、深雪さんで良い。」





困惑した素振りを示す男に、刺すような口調で切り返すと、あからさまに顔色が変わった。




「失礼ですが、諒様が奥様にどのようなご用件で―?」



「訊かれる筋合いはない。案内しないなら勝手に行かせてもらう。」





そう言い捨てて身を翻した所で。





「お待ちくださいっ、、、今暫く…」





男が慌てて諒を引き止める。






「今、今奥様がいらっしゃるかわかり兼ねますので―お出掛けになられたかもしれませんし―」





「―時間稼ぎなら通用しねぇぞ。今すぐお前が案内しろ。」




「っっ…」




ドスを利かせた声で振り返れば、男は弱々しく頷いた。



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