シンデレラは硝子の靴を
「ご、ご主人様?」
―そうだった。
沙耶は再び思い出す。
―まさか。
さっきからの記憶を辿ると、嫌な予感しかしない。
その上、沙耶の着ていたワンピースと違って、ざっくりしたカットのワンピースが落ち着かない。
「ささ、こちらへ。」
そんな沙耶の様子などに気付くこともなく、メイドは部屋の二枚扉を開け放ち、沙耶が来るのを待っている。
まるで有名旅館のお見送りみたいだ、と思った。
―出口は、どこだろう。
逃げるタイミングを見計らいながら、沙耶は仕方なく部屋を出る。
そして、出た所の廊下の広さにぎょっとした。
息を呑んで立ち尽くす沙耶に、メイド達は列になって深々とお辞儀をしている。
最初に部屋に入ってきたメイドだけは、案内してくれるようで、先で振り返って沙耶が来るのを待っている。
―これは、ちょっと難しいわね。
数メートル先にある大きな窓からは、木の葉が見えている。
ということは、少なくともここは2階以上ということになる。
沙耶は直ぐの脱出を諦めて、素直にメイドの後を付いていくことにした。
廊下には要所要所に高そうな骨董品が飾られており、時折花も生けられている。
これだけ照明が煌々としているにも関わらず、塵ひとつ見当たらないことに、沙耶は驚いていた。