浮気彼氏から奪うオトコ。
蒼斗クンの傍に近寄ると、あたしは何とか笑顔を作った。
「廣クンなんていなかったよ。
ほら行こう?」
「え、あぁ。うん」
屋上から出ると、あたしは俯いてしまう。
それに気づいた蒼斗クンは歩くのをやめた。
「どうしたの?」
「ごめん……、蒼斗クン」
「何で謝るの?」
「…何でもないよ」
やっぱり廣クンに抱きしめられた、なんて言えない。
言ってしまえば、あたしの気持ちがばれそうだったから。
これ以上、蒼斗クンを1人にさせるわけにはいかない。
廣クンを忘れるんだと、そう決意したばかりなのに。
「そんなに悩まないでよ。眉間にシワ、よりすぎ」
「っへ?」
ピンッとデコピンをされて、我に返ると、蒼斗クンは苦笑いしていた。