龍乃一味のカオスな学園生活
しかし凄まじい人の群れだ。

アフリカ大陸を横断するヌーの群れを彷彿とさせる。

年末には毎年一日あたり50万人程の人出があり、日本各地から観光客も押し寄せるという天横。

これは真っ直ぐに歩けないレベルだ。

だいぶ庶民化したとはいえ、それでも御三家のひとつ橘の血を引く花。

こんな一般大衆丸出しの商店街に来る事はあまりないかもしれない。

「大丈夫ですか…花さん…何ならどこかお茶でも飲みながら待っていて頂ければ…」

冬樹が気遣うが。

「大丈夫だよ、大丈夫だけど…」

ポッと頬を赤らめる花。

「迷子になっちゃいけないから…手…繋いでもいいかな…」

「……」

無言のまま冬樹が差し出す手を、花ははにかみながら握る。

雪菜の息子である割に、冬樹の手は意外と温かかった。

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