強がりウサギの不器用な恋

「今日は、帰ってください。
私もこんな話をされて、いっぱいいっぱいなんですよ。
……察してください。」


無理に作っていた笑顔を消し、唇を震わせながらそう言うと、彼は小さく溜め息を吐き出して「わかった。」とひとこと呟いた。


ソファーから自身の大きな身体を持ち上げると、彼は部屋の片隅に置いていたキャリーバッグを手に持ち、そのまま玄関を出て行った。


これで……良かったのだろうか。

海藤さんにあんな話をされては、心の中がぐらんぐらん揺れる。


シンプルに考えれば、私は彼のことが好きで、彼も私が好き?

……皮肉すぎる。

< 376 / 404 >

この作品をシェア

pagetop