強がりウサギの不器用な恋

「トモカちゃんに、マユミちゃん。それと……ユカリちゃんだったよね。」


渡辺先輩にはちょっとした特技があって。
人の名前を覚えることに関しては、ピカイチというか天才的。

一週間前に一度会っただけの人物の名前をスラスラと言い当てるんだから。


「君は……宮田さん。」


はい、正解ですけど何か?
なんて、可愛げのない言葉を吐き出しそうになりつつ、それをかろうじて飲み込んだ。


八方美人というか、調子がいいというか。
この手の男は何となく苦手だ。



「宮田は怖いぞ~。怒らせるなよ? 真吾。」


可愛げのない言葉も飲み込んだし、不遜な態度を取った覚えもないのに。

少し離れたところにいた杉村先輩が、突如何の根拠もないことを言い放つ。

一体、私の何が怖いというのか。


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