天才少女の復讐法。


何をするわけでもない。


ただ、雨に打たれながら
『あの場所に戻りたくねぇな』
なんて思っていた。


それもそうだろう。


遺族を代表して、読み上げた葬儀挨拶。
『良き父親』なんて思ったことねーのに
読まなければならない嘘ばかりのスピーチ。


父親が死んだというのに
涙を流さない息子の姿を見て
不審な目をして俺を見る奴。


そして、入院してる母を知らないくせに
『なんで奥さん来ないの?』なんて
聞こえてくるその言葉も聞きたくねぇー。


そんなことを思っていると……


俺の周りだけ、不意に雨が当たらなくなった。


「……?」


不思議に思って、上を見ると
誰かが俺に、傘をさしてくれているんだ。

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