【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

母のその姿を見て、自分がどれだけ不幸だと嘆き周りが見えていなかったのだと分かったか。

あの場所は私の泣き場所だ。

じゃあ、私に泣き場所を奪われていた母は、何処で泣いていたのだろうか。
父が居なくなっても、一人で頑張っていた母に、私は自分の不満しかぶつけてこなかった。

今、月明かりの下泣いている母を、母を一人の女性だとやっと今、見れた。
やっと今、理解できた。

10分で日常へ戻るために、静かに泣く母の背中は凛々しくて、そしていて儚げで。

靴も履かず、私と美鈴は庭へ降り立つと、そのまま母の背中へ抱きついた。


「泣くなら一緒に泣きましょう」

私がそう言うと、母は振り返らなかったけど、代わりに美鈴が母の背中に顔を押し付けて泣いた。

すれ違っていた時間の分だけ泣いて、涙で潤せばいい。

月が隠してくれるから。

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