【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
残りの羊羹を口で頬張りながら、甘く苦しく胸が締め付けれらる。
未だに、晴哉の名前を聞くだけで抱きしめたい衝動が、彼を探してしまう。
この世には居ない彼を。
むせを揺さぶられ、翻弄され、泣きたくなるような恋情なんてもう、いらない。
「だから、俺はそうなりたいと思う自分が許せない」
「そうなる?」
どうなると言うのだよ。キミは。
「どっちに転んでも、許せなくなるんだ、きっと」
はっと自虐的に笑う幹太は伏し目がちにを羊羹を見た。
「甘くない」
「?」
「この羊羹、幹太みたい。全然甘くない、甘みが足りない、羊羹じゃない」
そこまで言うか、と自分でも呆れたけど、事実だから仕方ない。
幹太は、甘くない。自分にも他人にも厳しい。
砂糖を入れ忘れた、素材の甘さだけの和菓子みたい。