君と、優しくて愛しい日々を。
『…ああ、そういえば』
すると、ミラゼが何かを思い出したように、顔を上げた。
『あれとそっくりな色をした、植物があるのよ』
『えっ……なんて名前!?』
『さぁ、名前はなんだったかしら…えーと……うーん、思い出せないわね。ずいぶん前に文献を見て知っただけだから…』
もともと、ミラゼも好んで本を読むような女ではない。
それでも、今俺の隣にいる彼女が『ジェイド』であるきっかけをつくったのは、間違いなくミラゼだった。
そんなミラゼとジェイドが出会って、今では仲良く話をしている。
……これも偶然だというには、あまりに出来すぎているから。
その仕事が終わってミューザに帰ると、俺はすぐさまエルフォード邸を訪れた。
幼い俺が知っている、街でいちばん本が並んでいる場所は、そこだったから。
『なぁリロザ、本!植物の本を見せてくれ!』
部屋に入るなりそう言った俺に、当時十二歳のリロザは目を丸くして、『え?』と驚いた。