ペン先と筆先
◇◇◇
「ねぇ、2組のあの子みた?すごくない?」
「本当。なんであの子芸術行かなかったんだろ」
廊下で私を噂する声がする。
S高の制服の赤のリボンを揺らしながら、女の子たちが私のポスターを褒め称える。
『S高文化祭』とレタリングされた、幸福感あふれるポスター。
一年後、私はS高の普通科にいた。
芸術科にいかず、逃げたのだ。
芸術科を設けるほどS高は美術が強い。
普通科でも十分だった。
絵のうまいものは大抵芸術科に向かう。
そうして、私は普通科の神の地位を手に入れたのだ。
噂によると芸術科の浅倉の才能は目覚ましく、歴代で一番とも言われているらしい。
でもいい。
会わないから。
私は、浅倉から逃げたのだ。
負けるのを恐れて、でも絵を捨てるのも嫌で。
中途半端の中途半端な選択。
もう勝たなくていい。
勝たなくていいから、現実逃避をさせてほしい。
神と崇めてほしい。
褒め称えてほしい。
そんな私の筆先は、ペンを使った彼女を今日も恐れる。