イクメンな彼氏
「大丈夫か、比奈。
疲れただろ」

悠斗さんのマンションに戻ると、時計は深夜12時を回っていた。空港を出たのが10時過ぎ。事情聴取は明日でもいいと言われたので、彼の腕に包まれたままタクシーに乗り込んだ。

あんな場所にはもう、1秒たりともいたくなかった。

最後は洋介に同情めいた気持ちが浮かんだものの、彼を許せるわけでもない。

帰りのタクシーで何気なく空を見上げると、雲の隙間から大きな月が覗いていた。悠斗さんとお月見するはずだったことを思い出す。
信じられないことが次々と起きて、やっと私は彼と中秋の名月を見ることが出来た。

「どうして居場所がわかったの?」
警察で聞き忘れた疑問を思い出して口にする。壊れ物を扱うかのように私を優しく包んだまま、悠斗さんが答えた。

「GPS。まさかこんな事になるとは思わなかったけど、これがあって良かった」

デートの待ち合わせで迷子になった私に、念のためって悠斗さんがインストールしてくれたアプリ。

家に迎えに来てくれる事が多くて使う機会は全然なかったんだけれど、こんな事で役立ったんだ。

保育園を出る時にポケットに移したスマホ。悠斗さんとお月見の約束がなかったらきっと鞄に入れっ放しだった。
小さな事の一つ一つが、悠斗さんが私を守ってくれたような気持ちになる。
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