恋愛温度差
「やっぱ無理ムリ!! 絶対に裏がある。ここは断るべきだと私の心が叫んでます。なので、私は断固拒否です」

 私はチョコケーキとチーズケーキのタルトをお盆の上に置くと、厨房へと入って行った。

「あれ? 旺志がうちに来るなんて珍しいな。いつもまかないは黒崎のチョコケーキとチーズケーキなのに」

 厨房でケーキをつくっているお兄ちゃんが、ガラス越しに見える君野くんに視線を送る。

「はあ? まかないがケーキなの?」

「黒崎が、ぼやいてた。あいつの味覚はおかしいって。主食がケーキで、おやつがラーメンだとさ」

「え? 主食がケーキ? おやつがラーメン?」

「ああ。2度目の休憩のときに駅前のラーメン屋でとんこつ激辛ラーメンを食べるらしいぞ。んで夕食は、フルーツタルトだと~。変わってるヤツだよなあ」

 面白そうに兄が笑う。

 面白い……のか? 変わってるヤツで片づけて良い人種なのか???

 私はガラス越しに見える君野くんの姿を捉える。

 透き通るような肌で、まるで王子のような見た目。

 すっと背筋を伸ばし、正しい姿勢で椅子に座って窓から外を眺めている。

 ケーキ屋に不釣り合いの男子なのに、動じずに堂々と昼食になるであろう2個のケーキを待っている。

 格好良いのに主食はケーキで、おやつが激辛ラーメン……。そんな人が「金曜日暇か?」と私を誘った来たわけで……。

 何を考えてるんだろうか?

 
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