恋愛温度差
「茂美さん、茂美さん!! どこら辺から気づいてたんですか!?」
「ん~? あ~、あかりちゃんが泣いたの知ったときの旺志くんの表情の変化と、あかりちゃんをからかってる光を見る旺志くんの視線で、あれ?って思って。決定打は、あかりちゃんがイートインスペースに向かうときかな。旺志くん、すぐにあかりちゃんの腰を支えたでしょ?足の負担を軽減するためとはいえ、男の子が年上の女性に軽々しく触れるとは思えないから。きっと昨日のお泊りで、それなりのことはしたなって。そこからスッと新しい靴を出したのを見て、もうこれは『付き合ってるな』としか思えなくて」

 クスクスっと茂美さんが笑い声を楽しそうにあげる。

「つ…つき……つきあって…」
『つきあってません!』と言いたくて、口の中で言葉が空回りする。

「それにね。光のあの抜け殻感まんさいの背中。もう、おかしくって!! あれは、旺志くんに一泡ふかされたね」

 えっと……、君野くんはいったいお兄ちゃんに何を言ったの???

「私、思うんだけど……。旺志くん、あかりちゃんに本気だと思うよ。昨日が初めての……かもしれないけど。それだけで、勘違いした感情じゃないよ」
「どうして、わかるんですか?」
「う~ん、勘?? なんだろうなあ、旺志くんの細々(こまごま)した対応っていうのかな。23歳の欲望溢れる男の欲望ダダ漏れ下心まるわかり……とは違うんだよね。あそこの魂抜けた人は、もうほんとにそれは酷かったから。欲望ダダ漏れシタゴコロまるわかり行動が」
 お兄ちゃん、若いころ、茂美さんに何をしたのさ!!
 欲望ダダ漏れ下心まるわかり……て。ひどすぎる。

「だから、安心して身を任せもいいと思うなぁ。黒崎くんじゃあ、ああは愛してくれないよ」
「……えっ?」
「ん?」
「……なんで、知って……!?」

 わたしの頬が一気に、熱をおびる。

「わかるよ。光も知ってるよ」
「ええ~!? なんかもう……いろいろ恥ずかしすぎる」
「あかりちゃん、カワイイ」

 茂美さんが「ふふふ」と笑い、わたしの頭を撫でてくれた。

「あかりちゃんに春がきたね。旺志くんなら、あかりちゃんをお姫様のように愛してくれるよ、きっと」
 茂美さんが、うらやましいなあと呟いた。

 お、お姫様……のように???

 32歳のわたしを? お姫様のようにって……。
 想像つかないんですけど。

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