あのね、先生。

―ガラッ…

美術室のドアを開けると、もう何人か絵を描き始めてた。

「遅いよ、蓮くん」

「また捕まってたの?」

「うん、ごめんね」


俺が女子生徒と一緒にいるところを見たと言ってきた生徒はもう卒業した。

あの噂も、茉央ちゃんが卒業するころにはもうとっくに消えていたのに。

何も言えなかった。


「今日予定表貰ったんだけど、一番最初の行事って文化祭だよね。」

「あー、そうだね。どうせあたしたちポスター任されて忙しいんだろうけど」

「6月だっけ?」

「うん、2ヶ月後」

楽しみだね、なんて言ってる生徒の声を聞いて、あの日のことを思い出していた。

茉央ちゃんが泣いたあの日。

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